黒田博樹のキャッチボール相手だった2010年代最強サウスポー
・2015年成績
33試合 232.2イニング 16勝7敗 防御率2.13 奪三振301 WHIP0.88 fWAR8.6 rWAR7.3 奪三振率11.6 4完投 3完封
(太字はリーグ最高、斜体は両リーグ最高)
・2015年度タイトルなど
最多奪三振、サイ・ヤング賞投票3位、MVP投票10位、オールスター
パワナンバー:10000 80721 10557
今回は、232.2イニングを投げ最多奪三振のタイトルを獲得、キャリアハイとなるfWAR8.6を記録したドジャース一筋の最強サウスポー、クレイトン・カーショウの2015年シーズンバージョンです。
2006年のドラフト1巡目(全体7位)でドジャースから指名されたカーショウは、2008年にMLBデビューを果たすと、以降メジャーに定着。
2011年には33試合で21勝5敗、防御率2.28で最多勝、最優秀防御率、最多奪三振の投手3冠を達成。更にゴールドグラブに加え、自身初のサイ・ヤング賞も受賞しました。
以降はMLBを代表するサウスポーとして活躍。
2014年には4年連続となる最優秀防御率に加え、2年連続自身3度目のサイ・ヤング賞を受賞、更に自身初のMVPにも選ばれました。
その後も安定で活躍を続け、2017年には最多勝と最優秀防御率を獲得。
2024年までの17シーズンで積み重ねたfWARは76.4、rWARは76.5と殿堂入りの目安となる60を優に超えており、カーショウの殿堂入りはほぼ間違いないでしょう。
【豆知識】
2008年にドジャースに入団した黒田博樹とは共にルーキーながらメジャーに定着し、毎日の様にキャッチボールをしていた為非常に親しい。
黒田がヤンキース移籍へする前の2011年のオフにはカーショウに残留を直訴され感極まり、最終的にカーショウと対戦する機会が少ないア・リーグのヤンキースへ移籍した。
カーショウの数少ない欠点がポストシーズンでの弱さ。通算防御率はレギュラーシーズンが2.50の一方、ポストシーズンは4.49と別人の様な数字に。
査定
・コントロール A81
BB/9(与四球率)1.62、死球5、暴投9
・スタミナ S92、回復C
33先発で232.2イニング、1試合平均投球回7.03
・Hスライダー6
スライダー。平均88.6マイル(142.6キロ)で曲がり落ちる。回転にジャイロ成分を含む「スラッター」に近いボールだが、パワプロでの再現は難しいのでHスライダーに。
・ドロップカーブ7
Clayton Kershaw, Cooperstown Curveball. 👑 pic.twitter.com/J21os8APfA
— Rob Friedman (@PitchingNinja) 2024年7月25日
カーブ。平均74.0マイル(119.1キロ)とMLB平均よりも遅く尚且つ非常に縦変化量が大きい。アームアングルも相まってかなりのトップスピンなので文字通りの縦カーブ。その変化から時計の針になぞらえて「12 to 6 Curveball」と呼ばれる。
・SFF1
チェンジアップ。2015年は僅か11球のみだが、3球種にする為に採用。平均88.3マイル(142.1キロ)の高速チェンジアップなので本来ならHシンカーで代用するところだが、左投手にはHシンカーが存在しないので仕方なく球速が近いSFFで代用。
・対ピンチE
被打率.193に対し、得点圏被打率は.221
・打たれ強さC
・ノビB
フォーシーム被打率.234、SwStr%(空振率)10.1%
・クイックB
232.2イニングで被盗塁は僅か7
・キレ◯
スライダー被打率.176、カーブ被打率.116、チェンジアップ被打率.667(被打数3)
・逃げ球
HR/9(被本塁打率)0.58
・奪三振
奪三振率11.64
・牽制◯
牽制の名手で、2022年時点での通算牽制刺殺数は歴代8位となる70個。カーショウの被盗塁が少ないのはそもそもスタートを切る事が難しいからだと思われる。ただパワプロだと足を上げてからの牽制などの複数のパターンは無いのであまり再現出来ない…
・リリース◯
上の図の通り、球種毎のリリースポイントのばらつきはほぼ見られない。
・球持ち◯
StatcastのExtension(どれだけホームベースに近い位置でリリースしたか)は6.4でMLB上位26%だった。
・緩急◯
綺麗なバックスピンのホップする様なフォーシームと代名詞のカーブが持ち味
・球速安定
最速96.9マイル(155.9キロ)に対し、平均94.3マイル(151.8キロ)
・ゴロピッチャー
GB%(ゴロ率)は52.2%でMLB上位24%
・調子安定
33先発でQS27回、QS率81.8%
・守備力 D55
2015年のDRSは+5、通算では+38と好数値だが、内訳は盗塁阻止によるプラスが8割近くなので守備力はやや控えめに。
・真っスラ
カーショウのフォーシームはシュート成分がほぼ無く、Pitch Movementだけを見ると真っスラで表現したくなりますが、真っスラは採用しませんでした。以下はStatcastのデータに基づいたカーショウのフォーシームのちょっとした分析です。
注目したのはカーショウのアームアングルとフォーシームの回転です。
カーショウのアームアングルは約60°とかなりのオーバースローであり、その分リリースポイント自体が平均よりも中央(スライド方向)にある事が分かります。
またBaseballSavantのStatcast Pitch Arsenalという項目でカーショウの各球種の回転を確認すると、カーショウのフォーシームの回転は綺麗なバックスピンで、これにより平均的なフォーシームよりもシュート方向への変化が非常に少なく垂れずに伸びる様なホップ成分の強いフォーシームである事が予測できます。
実際、上の表のTotal Movement(単位はインチ)を見ると、Vertical Drop(垂直方向の変化)の欄でフォーシームは2.7インチ上方向に、カーブは5.2インチ下方向にどちらも平均以上に変化している事が分かります。またhorizontal Break(水平方向の変化)の欄では、フォーシームは利き手側への変化が平均よりも-5.9インチ、カーブはグラブ側への変化が-7.8インチとどちらも左右の変化が少ない事も分かります。
また、上の画像は2021年のカーショウの各球種の変化量と変化の方向を時計の針に合わせて表した物ですが、カーショウのフォーシームは12時方向への変化量(変化成分)が最も大きく、カーブは5時半方向への変化量が最も大きいという事を示しています。
以上の事から、カーショウのアームアングルが左投手の中ではかなり90°に近く、故にリリースポイント自体も90°に近い事に加えて、シュート成分が非常に少ないフォーシームを投げるので、変化量だけを見ると真っスラしている様にも見えますが、実際には中央に近いリリースポイントからシュートせずにそのままホームベースまで届いているという事が言えるのではないでしょうか。
また、個人的には真っスラは村上頌樹の様にストレートがスライダー方向に変化する選手に付けたいと考えているのも少なからずあります。
因みに、藤川球児の火の玉ストレートも回転が純粋なバックスピンに非常に近く、尚且つ回転数も非常に多いボールでした。(カーショウのフォーシームは回転数自体はそこまで多くない)
下の動画は藤川のストレートを科学的に分析した様子の物です。
ひとこと
ドジャースで中々ワールドチャンピオンとは縁が無かったカーショウでしたが、昨年やっと本物のワールドチャンピオンリング(2020年はパンデミックの影響で短縮シーズンだった)を手に出来たのは僕も本当に嬉しかったです。
カーショウは昨年11月の左膝と左足の手術により復帰時期は未定、それもあってか未だにFAのままです。現代では稀有なフランチャイズ・プレイヤーなので最後までドジャースでプレーして欲しいですが、果たしてどうなるでしょうか…
※今回からしばらく20時投稿に変更してみます。再び12時投稿に戻るかもしれませんし、また別の時間帯での投稿に変わるかもしれません。どうぞよろしくお願いします。